超高速ストリームデータ収集系 開発仕様案
2001.3.27
NIFS 中西秀哉
§1.概要
本システムは,高速サンプリング速度で多チャネルのプラズマ物理計測データの生成,収集,転送,格納,演算処理,表示(可視化)を連続無停止の実時間で実施するデータ処理(計測制御)装置である.本システムは,大別して以下に挙げる各機能を持つものとする.
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多チャネルデジタイザによるデータ生成.
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コンピュータからのデジタイザおよび同集合体の(遠隔)制御と光絶縁.
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生成データのコンピュータへの実時間転送.
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データの実時間格納.
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データの実時間解析演算.
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データの実時間可視化.遠隔での表示.
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データの高度解析処理による実時間機器制御信号の出力.
以下に各機能の要求仕様の詳細を述べるが,特定分野での利用に限定されないよう,基本的にオープンスタンダードに可能な限り準拠した仕様で実現するものとする.
§2.デジタイザによるデータ生成仕様
核融合プラズマ実験では,通常,アナログ信号をデジタル化するのに最も一般的に使用されるのが,トランジェントレコーダ型ADCといわれる時系列波形を配列データ化するデジタイザである.ここでもこの方式の高速ADCモジュールを開発する.デジタイザに要求する仕様は以下の通り.
概略仕様
ADCモジュールは,最大1MHzのサンプリングレートで8チャネル同時サンプリング可能な,A/D変換モジュールとする.各チャネルはそれぞれに独立したプリアンプ,16ビットADC,およびワンショット動作のための4Mワードの波形バッファメモリを持ち,プリアンプ増幅率は0.1~100倍で,入力レンジは±2.5V,±5V,±10V,+2.5V,+5V,+10V に設定可能とする.サンプリングクロックは8ch共通で,ローカルクロック(の分周)か外部クロック入力を選択できる.
動作モードには大別して,ワンショット(バッチ処理)モードと,リアルタイム・ストリーム処理モードとを持ち,前者ではCAMAC
ADC互換の動作を行う.後者では1筐体内に収納される100chのアナログ信号を同時に無停止連続でデータ収集・転送できる能力を持たせる.
論理的仕様
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ADC分解能
16ビット
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サンプリングレート
最大1MHz
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クロック
1kHz,2kHz,5kHz,10kHz,...,500kHz,1MHz,
およびDC~1MHzの任意外部クロックが選択可能.デューティ50%
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デジタル入力
外部クロック,スタート/ストップトリガーがデイジーチェーンで同期可能
TTLレベルで動作
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アナログ入力レンジ
±2.5V,±5V,±10V,+2.5V,+5V,+10V ch毎に設定可能
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入力インピーダンス
100kΩ以上
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デジタル化精度
0.1%以下 (フルスケール比)
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プリアンプ
0.1~100でゲイン値がch毎に設定可能.
DC~1MHzのアナログ信号帯域で歪率が0.1%以下
ch間の入力絶縁のため平衡入力を推奨
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割込み処理
デジタイザから収集制御(ホスト)コンピュータに割込み出力が出来ること.
物理的仕様
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コネクタ形状
プッシュ・プル式かプッシュロック(バヨネット)式.ねじ込み式は不可.
アース絶縁のため2極LEMOコネクタを推奨
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チャネル(コネクタ)数
1筐体内に約100chのアナログ入力信号が収容できること.
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モジューラー構造
デジタイザはモジュール単位で着脱増減可能なこと.
機械的仕様
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筐体形状
CompactPCI 6U あるいはCAMACクレート程度とする.
19inchラックに収容可能である事.
電気的仕様
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アナログ絶縁性
チャネル間でアナログ部は絶縁されていること.
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耐環境性
高い耐静電(ESD)・電磁ノイズ(EMS)性能・機構をもち,
強磁場,強電磁ノイズの核融合実験室環境で安定動作すること.
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CMRR
コモンモード除去比 70dB以上
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ch間クロストーク
-60dB以下
§3.コンピュータからのデジタイザおよび同集合体の(遠隔)制御と光絶縁
以下,デジタイザモジュールの集合体とそれを格納し動作させるシャーシ,バックプレーン,コントローラなど全体一式をデジタイザ・フロントエンド(DFE)という.
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ホストからDFEの制御は,CAMACやSCSI機器で行われているようなコマンドベースとする.コマンド群は別途,詳細仕様にて定める.
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制御コマンドを発行しその結果を受取ったり,あるいはDFE側から割込み処理要求を受けるAPIライブラリが提供される.
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DFEはホストの周辺機器としてDFE1台ごとにドライバ経由で認識・制御される.
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各モジュールはホスト(アプリケーション)にスロット順に静的に認識が可能である事.
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DFE-ホスト間の接続メディア・I/Fにはファイバーチャネル(FibreChannel)規格を使用し,DFE-ホストは一対一あるいは多対一で接続が可能である事.
⇒ 但し,転送レート上問題があると判った場合は,一対多接続も検討する.
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接続メディアはDFE-ホスト間の電気的絶縁のため,光ファイバーによるデジタル通信リンクであること.
§4.生成データのコンピュータへの実時間転送
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DFE-ホスト間の光通信は,500kHz100ch(1MHz50ch)の全ADC出力である約100MB/s以上を,有限の遅れ(30ms)内でホストの主メモリー上まで無停止連続転送できること.
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生データ転送前後での実時間圧縮・展開技法の導入は,詳細仕様の調査協議事項とする.
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生データの実時間削減あるいはイベント駆動型データ収集法の導入は,将来の改良時の課題とする.
§5.データの実時間格納と解析演算
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約100MB/sの実時間生データストリームをそのまま格納できる能力があること.
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解析演算の結果得られたリアルタイム処理後データを実時間で格納できること.
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複数台のPCで解析演算と格納の並行分散処理が進められるPCクラスタとし,計算機負荷によってその分散度合(台数,構成)を増減・調整できる構成にする.
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実時間解析演算の開発ターゲットとしては磁場揺動計測を採り,演算ルーチン・出力情報などについては詳細仕様にて定める.<末尾参照>
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PCクラスタのハードウェア上で動作するOSは,Linux,Solaris(あるいはMS Windows)とする.
§6.データの実時間可視化・音声化と遠隔表示
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実時間データ可視化・表示機構作成の開発ターゲットとしては磁場揺動計測を採り,グラフ画像やデータ更新など出力情報,クライアント動作の可視化プログラムとデータ収集ホストとの演算処理分担などについては詳細仕様にて定める.<末尾参照>
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Linux/Solaris上でXwindowベースの表示プログラムを提供し,設定やユーザの簡単なコンフィグ・スクリプト記述により,多様なデータ表示ができるよう可能な限り汎用性を持たせる.
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Windows系統の場合,遠隔表示はターミナルサーバ機能を利用する.
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処理後音声波形化されたデータの音声出力もおこなえるようにする.
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リアルタイム表示画面は対話的にユーザが切替えられるようにする.
§7.データの高度解析処理による実時間機器制御信号の出力
磁場揺動により磁気島が生成するような場合,揺動成分の波形位相に同期させてCD波を入射することで磁気島の抑制が可能となる等アクチュエータの準備により制御も可能なので,磁気島(成長)の検出と制御信号の出力が,現在のところLHD磁場揺動計測では,想定しやすいフィードバック信号出力の一つと考えられる.再度,担当の榊原氏と相談をする必要があるが,磁気島注意報・警報システムなどを簡単なコンピュータポートで出力する(光or音)ことを検討したい.
◆◆◆詳細仕様◆◆◆
§A.リアルタイム磁場揺動計測のための解析演算と可視化仕様
基本的に,新磁場平衡計測システムで処理されるWp, Ip, Mp,
サドルループ信号など約20ch(入力10ch)に関しては,ほぼ同等以上の機能を持たせて,本システムでも実装する.諸値は時間変化の一次元データなので,リアルタイムで横スクロールするx-tプロットを信号の数だけ実装する.榊原氏作による資料を参照.
磁場揺動計測用の約200チャネルのピックアップコイルアレイの実時間処理の仕様は以下の通り.中西 H13.3.5 の仕様調査資料も参照.
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Power Spectrum Density(PSD)の時間変化をカラーcontourプロット: 100kHzサンプリングの時系列データ2048サンプルで各チャネルFFTをかけ周波数成分に変換.横軸:時間,縦軸:周波数のグラフで,周波数成分が強いところは赤く,弱いところは青くカラー表示し,どの周波数の揺動波が立っているか,またその時間変化を横スクロールで一目で判るように表示する.
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Coherence contour plot: PSD contour plot
が周波数成分だったのに対し,空間のプラズマモード数(m,n)の各成分強度を全196チャネル間の相互相関解析によって算出,縦軸:(m,n),横軸:時間で同じく強度の強いところを赤,弱いところを青くするなどでモード数成分の時間変化を表示する.
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モード数毎の成分強度変化: 縦軸:モード成分の強度,横軸:時間で(m,n)=(1,1),(2,1),(2,2),...のそれぞれの成分強度変化グラフを縦に幾つか並べてx-tプロット&横スクロール
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磁気面表示: 縦長断面位置,横長断面位置での内部磁場構造をcontourプロット.磁気島が生成しているなどがリアルタイムで見られると面白い.内部構造の演算モデルを埋め込む.
以上の表示画面が同時に複数表示できることが望ましい.一部は切替えで可.